タイミングの悪い男
「ま、待ってください、ハルさんっ」
「ま、待ちませんっ。ていうか、付いてこないでください!」
早足で歩く彼女の背中に情けない声をかける。
こちらに呼ばれるときはいつも突然で、心の準備なんてそんなものものできるわけもなく。
今日来た時は、ハルさんの膝の上だった。
ラッキーなんだか、タイミングが悪いんだか分からない。
抱っこされるように抱えられていた腕は、いきなり来た重みに耐えられず彼女の甲高い叫びと共に離された。
つまりは自分のお尻が彼女の膝の上に激突する形になる。
正直、痛くて痛くて動けないようなところをぶつけてしまったが、
その場から足早に逃げようとしていく彼女をほって置けるはずもなく今に至るのだ。
「ハ、ハルさんっ」
何度目かの呼びかけにようやく彼女が立ち止まり、くるりとポニーテールを揺らし勢いよく振り返ったかと思えば
これまた勢いよく、捲くし立てるように話はじめた。
「だ、大体、あなたはなんなんですか?!誰なんですか?!ランボちゃんを何処に隠したんですか?!」
息継ぎもせず話しきった彼女は、鼻で荒く呼吸を整えた。
「えっと、だから、俺がランボなんです」
「そ、そんなわけないじゃないですか!ランボちゃんはこんなにへんてこじゃあありませんよ!」
「へ、へんてこって・・・」
「ランボちゃんがこんなエロい人なわけありません!変な服着ないで下さい!セクハラで訴えますよっ!」
「そ、そんな、これはファッションで、巷じゃ俺も結構モテたりもするんですよ」
「むむっ!なんなんですか?さりげなく自慢ですか?信じられませんね!
早く帰って他の女の子とイチャイチャしてればいいじゃないですか!
ハルはそっちには行けません!そんなの知る術がないじゃないですか!
もうランボちゃんなんて知りません!」
そう言うと彼女は走り出す。
「・・・ハルさん、今、ランボちゃんって」
嬉しさが込み上げて、それがエンジンとなり彼女を追いかける。
あんなにつんけんしていたのは彼女なりのテレだとこの際都合よく解釈しよう。
でないと、ヤキモチなんて焼いたりしない。
「ハルさんっ」
可愛いハルさん、愛しいハルさん。
あと少し、あと少しで彼女の手に届く。
手を掴み、引き込んでこの腕にきつく抱きしめよう。
そう思い彼女の手をすくい上げようとした、その瞬間。
ボバン!!!
タイミングの悪い事、彼女の手と共に、彼女の怒りの真相も煙の向こうに消えていった。
(タイミングの悪い男)
ランボはタイミング悪そう。